大学で将棋部に入っていた。校舎に入ると、6人乗りくらいの狭いエレベーターに乗った。俺の後から2人くらい乗ってきた。階のボタンはやや下の方にあり、上から『1234』と並んでいた。『4』を押したがうまくいかず、何度か押し直した。

4階で降りると、初めて来たのかある中年女が部屋の入口で落ち着かない様子だった。派遣の人かなと思った。

広い部屋に入るとローテーブルがたくさん並んでいた。そのどれかに『鷺沼』と大きく書いてあった。壁に『鷺沼ジュエリー』と書かれた紙が貼ってあるのを見かけた。

奥の中心の席に、大学時代のバド部のHN先輩が座っていた。それで部活のフロアを間違えたことに気づいた。そういえば将棋部は5階に移ったんだと思い出した。そしてIT先輩も彼と同じ部活だと気づいた。似たような文化系クラブのようだが俺の部とは違うようだ。

俺はHN先輩に苦笑を向けると、折りたたみの将棋盤と駒の箱を持って部屋を出ることにした。

 

【洞察】

1.エレベーターのボタンが逆順なのがなにか意味ありげだが、移動は普通に上に向かっていた。

2.大学3年から院生2年まで住んでいた「鷺沼」が強調されていることから、4階はその時代(の特徴)や過去のことを表していると思われる。

3.俺はなぜ「将棋部」なのか、バド部だったはずの自分も先輩もなぜ文化系クラブに属しているのか、よくわからない。しかし先輩らとはもはや違う部活であり、将棋部は1つ上の階ということで、人生の新たなステージ(エレベーターには存在しない階なので、いかにも新設という感じ)に入ることを暗示しているのかもしれない。

4.大学や院生の頃からようやく1段階上がるということなのか。だとすると、そこから今までの25年は間違った道や寄り道だったとでもいうのか。