父(故)の車の助手席に乗っていた。見知らぬ郊外をドライブしていた。

父はおもむろに、どこに住みたいかという話をはじめた。父は「本当は田舎に住みたいんだ」といった。はっきりとはいわないが、都会の喧騒などから離れたいらしい。俺は「車持ってるんだから田舎に住めば?」といった。転勤で釧路に住んだこともある父だが、もっと郊外からだって通えたろうにと思った。

父は「でも都会からは離れたくない」みたいなことをいった。(一見矛盾しているが)言わんとしていることが何となく見えてきた。俺は「じゃあ都会の中の田舎に住めば? (自然は)多少(人によって)作られた感はあるけど」といった。

いつの間にかそのような土地を走っていて、父はそのことについて議論を始めたいようだった気がする。それにしても今日の父はよくしゃべるなと思った。

 

【洞察】

1.文字通りの解釈とすれば、自分の真意をいろいろと鑑みて本当に住みたい場所(ある程度の便利な都会であり、かつその中か周辺に自然も多い)のことを語っていると思われる。ただ、それはだいぶ前から心の底で思っていることであり、金もないのに今その話?という唐突な感じもある。

2.作曲に関する方針について可能性がある。ここでいう都会というのは、ポピュラーつまり売れる音楽のことで、田舎は自分にとっての自然で奔放な音楽(多くは前衛的な)のことであろう。

本当はやりたい放題にしたいが、売れない(食えない)のは困るわけで「都会の中の田舎に住む」とは、ポピュラー音楽の枠の中で(その影響を受けてはしまうが)奔放な自分を出すしかない、ということであろう。

3.洞察1と2のダブルミーニングの可能性もあり「都会の中の田舎に住む」というのは、人生の重要テーマなのかもしれない。