アミ 小さな宇宙人作者: エンリケバリオス,さくらももこ,Enrique Barrios,石原彰二出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2000/12/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 58回この商品を含むブログ (49件) を見る

児童書の皮をかぶってはいるが、実は大人向けに書かれた哲学や思想の類の書だった。
未来や過去にとらわれるより、とにかく「今」を謳歌しようとすることや、思考よりも感性を重んじるといった、ラテン系の著者らしい姿勢には賛成できる。
だが一方、「愛」という単語を振りかざし、理屈でもって愛や神の重要性を説こうとする態度は、どう見ても彼の感性志向に矛盾している。高度文明人に上からものを言われているような気分にさせられるこの作品のかたちは、あまりほめられたものじゃない。ほんとうに偉い人っていうのは、実は腰が誰よりも低く、そういった人が上に立ったときは、世の中を上手く治めている。
また、人間のエゴを徹底否定しておきながら、「動物を殺すのはかわいそうだから肉は食べるべきじゃない」とか、獣を人より低く見る考え方などは、あくまで人間を中心にすえた発想、著者自身のエゴの現れがあり、彼の力不足や視野の狭さを感じざるを得ない。何かを食べるということは、何かを殺すというプロセスが必ず発生する。それは菜食であっても然り。植物だって立派な魂をもつ生き物なんだということを思い出して欲しい。
愛と平和を説くのはいい。その訳についても共感できる点も多い。だが、すべての人々が国境をなくして「統一」すべきであるという彼の考えはけっこう危険だ。これまで何十億年も地球を支えてきたのは何をおいても「多様性」だということに、著者は気づいていないのだろうか。彼の考えをねじ曲げて受け取り、「統一こそが我々人類の使命であり、それに反対する奴は滅びるべきだ」みたいな原理主義のような暴力的な発想を持つ権力者が出てきても決しておかしくはない。
ツッコミどころは満載だし、プロセスをすっ飛ばした「正論的な結果」の提示が並んでばかりだが、言いたいことはそう間違ってはいないと思う。理屈だけじゃほとんどの人は納得しないよ、ってだけ。まあ、ともかく刺激的な作品であることには間違いない。★★☆