世界で最も難しい八千メートル峰を、たった二十キロの装備でベースキャンプから独りで登るという境地など、一般人には想像もし得ない。望まぬ離婚をして妻を忘れられず孤独に耐えきれずメソメソしている男が、狂気とも言える目標を打ち立てて、孤独を恐れから力に変えていくのだが、当初の目的だった記録的に困難な単独登山はあくまできっかけ。その孤独の中で徹底的な自己内省が行われ、彼は自分とは彼にとって人生とは何であるかをつかみ取る。
人は独りでは生きていけないのは確かだが、独りにならなければ自分の道を見つけることはできない。この孤独がなければ、自分と徹底的に向き合う時間が持てなければ、彼はこれほどの偉業を達成できなかったに違いない。
自分が何をしたいのかわからなくなったとき、あえて孤独に飛び込んでみるのもいいことだと思う。世の中や他人とつながることばかりに腐心して、自分を見失ってしまった人に、おすすめしたい。★★☆