海難事故の9割は3日以内で死ぬという。だが、彼は76日も生き延びた。なぜ、このような苦難に耐えられたのかという質問に対する、著者の短い答え。そこに、この実話のすべてが集約されている気がする。(この話のキモなのであえて伏せておこう)
人間、追い込まれると、金持ちにとってはゴミ同然のものでも、工夫に工夫を重ねて命をつなぐ宝のように利用してしまうようだ。忘れてならないのは、彼は普段から相当な教養を積んでいたということ。航海術から文学に至るまで、圧倒的な勉強量が彼の命を救ったといっても過言ではない。一見無駄とも思えることが、死の淵では魔法のごとく輝く。
死にたいと思えるほど精神的に苦しんでいる人は、あえてこのような究極の死地に飛び込んでみて、生の喜びを味わってみるのもいいのではないか。それで自分が本当にこの先、もっと生きたいのかどうか試すことができるかもしれない。★★★